SNSに生息するミネルヴァの鶏
いつも朝焼けにバサバサと飛ぶ
この国で一番愛されてるのは忘却
そのことも忘れられているから本当
他人を押しのけて自分に到達した結果
頂上で振り返れば無数の僕が倒れている
人間を産んだのは神だが
神の産婆は人間であった
× 家に僕が住めるところを
〇 家を僕が住めるところに
目だけ自殺した同級生を覚えてるか?
あいつって今でも喪に服してるらしいよ
この世に存在しなかった者の伝記をもとに
この世に存在しなかった者の墓地に祈った
僕-身体=x, 僕-精神=y,
だが x+y は何者でもない
ぼくの視力はマイナス0.5くらい
だいたいちょっと過去が見えてるよ
ケージに出された餌皿に尾をふり
制服内に飼ってもらう僕をよろこぶ
輪郭線を優しくなでてくれた手の平は
いつも少しだけ僕の位置とズレていた
老衰によって死ぬように
若衰というべき死因もある
いつも過去の自分のコスプレをしてる
推せるだけの今クールがないからね
同じですねとあんたは無意識に言った
同じですねとわたしは意識して言った
人は過去には目がないもので
美しい昔をコレクションしたがる
過去に落とした涙の粒が
未来へのマキビシになる
マイノリティをネタにした他人のジョークに傷つくように
人々と笑う私の自演にもっとも近い他人が傷ついている
子どもはにらめっこですぐに噴き出すのに
なぜ大人が顔という喜劇に耐えられるのか
私の口の中に生えたあなたの舌と
二枚舌のグルになって自分を騙す
若いアイアンメイデンたちは抱きしめあって
お互いを血みどろにしながら成長するのです
この震災では自己だけが獰猛に震動し
身が輪郭の外に振り落とされそうである
わたしの母語に標準語はなかった
家族も別々の方言でしゃべってた
寄生体と共生していった平和の果てに
僕はどこまでが自分か見定められないよ
舌禍に家族が吹き飛ばされるなか
台風の目のお前だけが無事でいた
たかが生
されど死