愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

【短歌】息づらさ篇

 

泣く子ほど息を吐きたしああああと大人する権利ちょい失くしても

その子をも息吸いたかったはずだよ令和すべての空を吸って吐いてさ

ハイ先生息してきてもいいですか漏れそうなんですここぢゃダメです

夏の子に蛇口上向くアマリリス水飲むように深呼吸せよ

前世きっとエラ呼吸だったんだよだから息がヘタクソ人がヘタクソ

ここはまだうすい水中横しぐれ肺呼吸したエウステノプテロン(お前)憎らし

東京の空気じゃ天使飛べないってそれでゴジラは今度も来るって

全人類全言語および全文学道に迷ったユウステノプテロン

蜻蛉の呼吸を人は習うべし葦の草場の冬の夕暮れ

水合わぬように空気が合わぬ国硬い酸素に肺に重い荷

ただ息をさせられていなさいただのお前個人の尊厳とかいまはいいから

いきなさい最後に息を吐く日までゲボ吐くごとく吐いていなさい

ゆく風の流れは絶えずしてしかももとの風にはあらずスーハー

(スーハースーハースーハースーハースーハー スーハースーハースーハースーハー)

呼吸する呼吸する呼吸する呼吸する呼吸する呼吸する呼吸する也