愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【現代詩】いのちなしせたまひそ

海のすべてが墓石になってもかなしみにはちいさすぎる 遺体とはわたしのことこの世に遺されてしまったなすすべのない者のこと イザナギノミコトと化せるなら黄泉などかるがると越えていく どうか魂になどならずとおい星になどならずただの肉体でここに居よた…

【諷刺家ファイル】ノーベル文学賞記念 オーストリアの作家たち ペーター・ハントケ/トーマス・ベルンハルト/カール・クラウス

先日ノーベル文学賞が発表され、2019年の受賞者にオーストリアのペーター・ハントケが選ばれた。 せっかくなので、今回は趣味で記録している「諷刺家備忘録」の一環として、オーストリアの作家たちをとりあげる。ペーター・ハントケ、トーマス・ベルンハルト…

【現代詩】中原中也RPG

Ⅰ 柱も庭も乾いている一刻よりも長い半刻今日は平穏な好い天気階段の裏で蜘蛛の巣が心細そうに揺れているはいかいいえか選ばずに中空に瀕死のぼくが浮く 山では樹々もブレスを吐いた今日は平穏な好い天気この世のあらゆる四角い影があどけないかなしみを傾け…