愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

【断想】執行猶予無期(聴聞権の失効)

体中に口の生えた化け物が一声もあげずに息絶えていた 言葉の暗夜に耳の炬火を掲げ黙り込んだ幼子の顔を照らせ立ちすくんだという聴聞権が閉じられた舌を拓かせるまで 私は沈黙に呼ばれている悲鳴より聞こえているものに 人は黙殺で二度殺せる 唖にはびこる…

【断想】失調統合症(女という汚名ではなくて)

女という汚名ではなくて私はふつうの名前に耐えていないといけない 死よりマシな一日を生き死よりマシな一日を眠るその一生が死よりマシかどうかはともかく 大量生産された名前が私を初めて個人にする 過去が現在すぎるときにすぐ眠れるわけないでしょ 同僚…

【断想】ぼくは自分から他人すぎる

昨日に僕は戻るそしてそこには誰もいない誰とも待ち合わせていない昨日に僕は戻るそしてそこには誰もいない昨日で僕は待っているそしてそこには誰もいない ・ 笑顔は口よりも大きいまなざしは目よりも重い大きさと重さで子供の顔はつぶれた ・ ぼくは社会か…

【断想】義肢 義顔 義僕

昨日に僕は戻るそしてそこには誰もいない誰とも待ち合わせていない昨日に僕は戻るそしてそこには誰もいない昨日で僕は待っているそしてそこには誰もいない ・ お前のまなざしが顔を彫ると僕の仮面が発掘されるお前がそれを付けるとお前が見られている僕の顔…