愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

【断想集】すべてのクレタ人のための現在完了形疑問符

 

人間は誰もが生まれつきのクレタ人ではないか、とクレタ人の彼が言っていたような気がした。

 

リニューアルオープンしてピカピカになった歴史的建造物みたいな史実。

 

政治家はたびたび史実の建て替え工事をする。国民はたびたびその片棒を担ぐ。

 

(美しい日本語による雅な和歌)
舌の根にケツの穴でもあるのかよ
クソ垂れ流す政治家の口

 

言葉が伝わらないのは わたしの舌が異邦人のせいなのか それともあなたの耳が異邦人だからなのか?  まるで手を打ち鳴らしたときに鳴ったのは右の手か左の手か?っていう禅問答みたいな答えのなさに私は舌打ちする そしてここでさらなる疑問 さあ 鳴ったのは口蓋が舌先か?

 

あなたの一言はBGMと喝采付きのオープンマイク
わたしの一言は異国語でつぶやかれた沈鬱な小声

 

クレタ島以外のすべての人が嘘つきだとしたら?

 

狂っていることを狂った言葉でまっとうに批判することはできる¿  相手が間違いなく狂っていることを 間違いなく狂っている言葉で批判したときに 私たちが間違いなく狂うということについて 私たちの正気はどんな言葉で正常に理解したらいいの¿

 

 ――病めるときも健やかなるときも、「いいえ」と言いたいとき正直に「いいえ」と言うときも、お互いを守り愛し合うと誓いますか?
私は微笑む。
 ――いいえ。
 ――では誓いのキスを。
そして触れ合うくちびるとくちびる。LOVE。