断想
泣く子ほど息を吐きたしああああと大人する権利ちょい失くしても その子をも息吸いたかったはずだよ令和すべての空を吸って吐いてさ ハイ先生息してきてもいいですか漏れそうなんですここぢゃダメです 夏の子に蛇口上向くアマリリス水飲むように深呼吸せよ …
人間は誰もが生まれつきのクレタ人ではないか、とクレタ人の彼が言っていたような気がした。 リニューアルオープンしてピカピカになった歴史的建造物みたいな史実。 政治家はたびたび史実の建て替え工事をする。国民はたびたびその片棒を担ぐ。 (美しい日本…
どこからどこまでが理解促進で、どこからどこまでが誤解促進なのか。 有識者(?)やえらい世襲男性たちの汚染語ないし処理語がワタシに流れついてる。 被災地がカタカナになる言語的な風習があるんだったら、これからは私のことをワタシって書かないとね。 …
2023年9月、フクシマで、ではなく福島で、原発汚染水の、じゃなかった処理水の、ホウスイ?がおこなわれた。私の、ではなく、いやこの場合は私でいいのか、私の、ともしも言ってよければ、でも違うと思うけど、仮に、私でよければ、私の国は、じゃなかった、…
いつか本物に出会ったとき非難されそうな僕はいつも自分自身の贋作みたいでいる ぼくは自分を養子に出してあげたいせめて他人で幸せになってくれたら 船酔いをするように自体に吐きそうになる難破してしまう挨拶の微風もぼくには嵐で 僕は世間との共同作業に…
私は車内で『完全読解精神現象学』を開いてヘーゲル哲学の粋を東西線内の移動時間でマスターするつもりでいる。アプリゲームのドラゴンやイケメンやパズルのもろもろに没頭する愚かな凡夫たちなんかとは違って、私は脳内で遠大な歴史哲学を理解するために、…
あのうすいませんここってやさしい虚偽入門教室の会場で合ってますか?ええっとここの施設ではやさしい日本語入門教室しかやってない?ああそれで大丈夫ですはじめましてこんにちは。 生活のためには目にしたくもないほど嫌な奴とも付き合っていかないといけ…
どんな現実も、僕の想像力ほどは美しくなかった。 先鋭化した記憶は、いくつになっても現在に刺さる。 過去が立ちふさがって未来に進めない。 あまりにも磁力を持ちすぎて、いつまでも遠ざからない昔。 思い出の欠損を想像力のペンキで塗り直す。 想像力が発…
「いいえ」と私は断言した。それを私は否認していなくもないことを受忍していなくもなく、もしかしたらたぶんそうではなかったと言えなくもない心理が必ずしもなかったとは言えないかもしれないのではないかと思えなくもない可能性が否定しきれない。よって…
(「いいえ」と私)はい(った)。 この国に来た者はトリリンガルにならなければ生活ができない。母語と日本語ともう一つ、日本には手話ならぬ目話があるから。日本人と日本人とのあいだでのみ交わされているであろう、まなざしによる活発なおしゃべりの言語…
「私は」といいえが言った。 語り得ることについては、ヴィトゲンシュタインも沈黙せねばならない。 みんなが嘘つきだとみんなが言う。 クレタ島のエイプリルフールにテンションが上がる論理学者たち。 エピメニデスだけは嘘つきだ、とクレタ人の先輩がグチ…
「はい」(ではなく、「いいえ」と私は言った)。(「い」、「い」、「え」と私は言った(はずだ)。「い」と「え」の母音を続けて発話して相手の鼓膜まで届けばいいだけ(のはず)の言葉を、私は言った(はずだ)。) クレタ島ではもっとも嘘をつくことがな…
「はい」と私は言った。職員はいいえの欄にチェックを入れた。 疑われた理由のすべては母親の出自がクレタ島であるという一点のみで、渡航歴が記録された公的かつ唯一の正式な書類によれば、彼女自身は島に行ったことさえなかった。 語るにふさわしくない舌…
「いいえ」と私は言った。 ステップ1:私の舌の中に異邦人の舌が住まう。そうして私を主語にして語る。ステップ2:異邦人の舌の中に日本人の舌が住まう。そしておもむろに私を主語にして語り出す。ステップ3:「いいえ」と私は言った、と彼らは聞く。 私…
Photo by Pixabay 「いいえ」と私は言った。 買い物帰りのふとした閑暇に住宅街を見渡せば、むかし故郷で見た懐かしい風情を思わせる質素な家屋の上空に、乾いた北風をともなって浮かぶ豊かな抑揚のついた雲が、気高い天来の趨勢を過度に漂わせながら流れて…
自分と初対面だという日がよくある いつかは忘れられるけど当面のあいだは苦痛でありつづけるタイプの記憶 針の形をした水素が血に刺さっている 心臓は歯と同等の硬度に進化すべきだった 僕の遺伝子だけ螺旋状でなく鍵爪状なのかも 自己に複合されている反自…
僕は自分に失明することで世界を耐えた涙を流すための器官はもう発見できない 気まぐれな幼年期が時制の柵を飛び越えてやってくるでも退屈しかないとわかってすぐに軽蔑しながら消える 胚胎した幼児が私に産声をあげ郷愁の臨月に涙腺が破水するお前黄泉の入…
メデューサの耳に聞かれて舌だけが石化する私たち どうせ沈黙が口を開けるから私はいつも人前で口を閉ざす 動画とTVとチャットとSNSとポッドキャストとスポティファイ聞いて近頃は誰でもプチ聖徳太子やってる 耳なし芳一を教訓にしてたんだけどわたしたち舌…
はじめに言葉もなかりき ・ 人間:吾が窮乏の訴へは 薔薇(さうび)の枝を啄(ついば)むごとく 汝の耳に聴くに堪へざるところならんや 祈りの詞(ことば)をば知らざりしかど おほいなる涙の露はおちかかりけり 神よこのあはれな者を 御身の慈悲により救い…
どうしようもないのでとりあえず自分のふりをしてやりすごしている ぼくは一人の群衆にすぎない 目には目を 舌には舌を 顔には顔を 僕は他人の自伝を編まないといけない 言葉は沈黙で発酵(もしくは腐敗)する 神の沈黙に鼓膜が破れる 他人行儀に自身という…
ぼくを 君を おれを わたしを あたしをわたくしを あなたを 貴殿を きみたちを我らを 自分を 私を 俺を あなたを ぼくがいたのに あなたがいたのに自分がいたのに 俺がいたのにお前がいたのに 君がいたのに 災害はすべてを三人称にしていった ・ わたしたち…
僕の口中はお前たちの顔でびっしりだ舌の表面で爛熟した顔顔顔の熱帯雨林舌の中の舌の中の舌の中の舌の中の舌お前たちの大量の顔で舌が動かせない身動きがとれない顔うごきがとれない舌うごきがとれない好き勝手にしゃべりまくる舌の腫瘍共四半世紀越しの顔…
SNSに生息するミネルヴァの鶏いつも朝焼けにバサバサと飛ぶ この国で一番愛されてるのは忘却そのことも忘れられているから本当 他人を押しのけて自分に到達した結果頂上で振り返れば無数の僕が倒れている 人間を産んだのは神だが神の産婆は人間であった × 家…
この舌には棘だけが生え伸びる薔薇もなしに 身体のハードに無理やり適合させて再起動した本当は互換性のないソフトウェアみたいな自己 自分が自分を人質に取って自分を恐喝する試みにやっと成功したとき三人の自分が被害者になっていた 狭小な新疆自分自治区…
友達の悲劇に目を疑い家族の不条理に耳を疑い大人の口を疑う日々の結果自分だけを疑うようになった トラウマの万年雪にフラッシュバックの雪崩病いの豪雪地帯でビーチサンダルを渡される 世相の油を飲み干して私の舌に火事が起きた凍てついた世論に延焼し燃…
長男は耳を藁でふさいだ次男は耳を木材でふさいだ三男は耳をレンガでふさいだ しかし オオカミの声はすべてをつらぬいた 四男は耳を鉄でふさいだ五男は鉄筋コンクリートでふさいだ六男は必死に怒鳴り返した だが 声はすべてをつらぬいた 七男は防音室に立て…
四六時中自分の面倒を見ないといけないなんて! 僕は自分の身の丈に合っていない 僕に自分を外注している 慣れない義手みたいに言葉を使っている ぼくは精神科医に病んでる 僕はあなたの言語の外で育った 舌が焚書にあう ぼくは逃げも隠れもしたい! 舌の下…
それは闇の中で希望を告げる光ではなく次の闘いの始まりを告げる焼夷弾だった 人々が口を開いては沈黙をたいらげている 人から噛み砕いて説明されたことでわたしごと粉々に砕かれてしまった 私の舌から知らない文法が出てくるその方が相手はよくうなずいてく…
名刺のためにたくさんの顔を刷る 教育は僕を娼婦にして稼がせることに成功した 僕の趣味は徒労本業とおなじ 自分の顔に不在票をかけておく これは僕と原寸大の牢屋 命の顔料が尽き世界に色がない 僕は自身の身重となって心臓に陣痛だけがある たくさんの足を…
狂いすぎたせいで一周まわって正常って感じ 自分自身との調停は常に泥沼 また自分の法廷で私が否決された 心療内科へ過去を工事しにいく 金出しゃ誰でも大歓迎!ようこそメンタルクリニックへ! 希望が抱けないなら せめて絶望のバリエーションを増やそうぜ …