愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

【断想】ミネルヴァの鶏

SNSに生息するミネルヴァの鶏いつも朝焼けにバサバサと飛ぶ この国で一番愛されてるのは忘却そのことも忘れられているから本当 他人を押しのけて自分に到達した結果頂上で振り返れば無数の僕が倒れている 人間を産んだのは神だが神の産婆は人間であった × 家…

【断想】傷口を舐める舌の動きが発話の起源だとしたら

この舌には棘だけが生え伸びる薔薇もなしに 身体のハードに無理やり適合させて再起動した本当は互換性のないソフトウェアみたいな自己 自分が自分を人質に取って自分を恐喝する試みにやっと成功したとき三人の自分が被害者になっていた 狭小な新疆自分自治区…

【断想】豪雪にビーサン

友達の悲劇に目を疑い家族の不条理に耳を疑い大人の口を疑う日々の結果自分だけを疑うようになった トラウマの万年雪にフラッシュバックの雪崩病いの豪雪地帯でビーチサンダルを渡される 世相の油を飲み干して私の舌に火事が起きた凍てついた世論に延焼し燃…

【詩】一匹の子豚と九匹の豚野郎によるオープンダイアローグ

長男は耳を藁でふさいだ次男は耳を木材でふさいだ三男は耳をレンガでふさいだ しかし オオカミの声はすべてをつらぬいた 四男は耳を鉄でふさいだ五男は鉄筋コンクリートでふさいだ六男は必死に怒鳴り返した だが 声はすべてをつらぬいた 七男は防音室に立て…

【ご案内】5月21日開催〈文学フリマ東京〉 参加決定

いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。《文学フリマ》出店のご案内です。 今回私は、「ひきポス」のメンバーとともに、5月21日(日)開催の《文学フリマ東京36》に参加します。 ひきポスは、「ひきこもりの声を届けるポスト」として活動する情…