愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

写真

【写真】金子光晴「寂しさの歌」付

どっからしみ出してくるんだ。この寂しさのやつは。夕ぐれに咲き出たやうな、あの女の肌からか。あのおもざしからか。うしろ影からか。 糸のようにほそぼそしたこころからか。そのこころをいざなふいかにもはかなげな風物からか。 その寂しさは、僕らのせす…

あいちトリエンナーレ2019 展示されていない作品を鑑賞していない記録・写真30点

先日、「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」を鑑賞した。名古屋に一泊し、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、豊田氏美術館と、四間道・円頓寺といった主要な会場を周遊。トリエンナーレにふさわしい現代アートの祭典であり、先端的な刺激に満ちていた…

【写真詩】石川啄木歌集付

人がみな 同じ方角に向いて行く。 それを横より見てゐる心。 家を出て五町ばかりは、 用のある人のごとくに 歩いてみたけれど—— 死ね死ねと己を怒り もだしたる 心の底の暗きむなしさ どんよりと くもれる空を見てゐしに 人を殺したくなりにけるかな 己が名…

【写真詩】中原中也詩集付

秋の夜に僕は僕が破裂する夢を見て目が醒めた(「脱毛の秋」) あ〃 おまへはなにをして来たのだと……吹き来る風が私に云う(「帰郷」) 血を吐くやうなせつなさかなしさ。(「夏」) わが生は、下手な庭木師らにあまりに夙(はや)く、手を入れられた悲しさ…

【写真詩】髙木敏次『傍らの男』付

もしも 遠くから 私がやってきたら すこしは 真似ることができるだろうか (「帰り道」) 知らない人によりかかって その人を 知っている人のようにおもいたい (「その人」) どこからでも見えるが 私だけが見えない (「男」) 死んだ人が 生きている真似…

【写真詩】ラーゲルクヴィスト『無題』付

自身で撮影した写真十点に、スウェーデンの詩人ラーゲルクヴィスト(1891ー1974)の作品二編を付けて公開します。ラーゲルクヴィストは岩波文庫に『バラバ』『巫女』がありますが、私は散文より詩に感銘を受けました。弱く孤独な者=自身への憐憫ある内省的…

【写真詩】「ヒルデ・ドミーン詩集」付

自身で撮影した2018年1月前後の写真に、ヒルデ・ドミーンの詩からの抜粋を込め、写真詩として掲載します。ヒルデ・ドミーンは20世紀ドイツの女性詩人で、簡潔な言葉から高貴な詩風を築き上げています。代表作『薔薇だけを支えとして』は、芸術であり愛である…

【写真】「私の虹」

「東京レインボープライド2018」にて自分で撮影した画像と、検索から借用した画像の加工からなる写真集です。(「レインボープライド」を批判する意図はなく、5月6日の個人的な憂慮を表したものです。) ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

写真詩「帰途」 /「ひきこもり新聞」サムネイルのための写真2 田村隆一の詩を添えて

2017年に、「ひきこもり新聞」のサムネイルに使おうと思い、撮影した写真です。画像だけではシンプルになるため、田村隆一の詩「帰途」を失敬し、写真につけ加えて公開します。 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦ 帰途 田村隆一 言葉なんかおぼえ…