愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

アート

【戯曲/インスタレーション】3つのドア

舞台上には3つのドア(A、B、C)が等間隔に並んでいる。ドアはいずれも中流階級の住宅でよく用いられる一般的なものであること。本作はこのドアの開閉と鍵の施錠、およびノックや軋みの音のみで上演される。開閉等にはドアノブの回転や鍵の施錠を含め、音楽…

【小説/MAD】飼育 feat.女子高生(大江健三郎の小説『飼育』に登場する「黒人兵」を会田誠の絵画『犬』をモデルとした「女子高生」に改変した日本文学)

※本稿は、大江健三郎の小説『飼育』に登場する「黒人兵」を、会田誠の絵画『犬』をモデルとした女子高生に置き換えた文章です。公序良俗に対して、適切であるために作られた文章ではありません。 参照大江健三郎 『大江健三郎自選短篇集』 岩波書店 2014年会…

【エッセイ】生誕100年 ジョン・ケージに捧げる433文字

【断想】『世界文学全集』より 沈黙・余白名場面集

紫式部 『源氏物語』「雲隠れ」 ダンテ『神曲』 …… ラブレー『ガンガルチュアとパンタグリュエル』 …… シェイクスピア『リア王』 …… スウィフト『ガリヴァー旅行記』 ……! ドストエフスキー『罪と罰』 ……? トルストイ『戦争と平和』 ………………………………………… プル…

【断想】『現代ウクライナ短編集』の一部抜粋と、収録作品「天空の神秘の彼方に」に登場する人名と人称代名詞のすべてを「人間」に置き換えた一文

今回は、『現代ウクライナ短編集』(群像社 2005年)の収録作、「天空の神秘の彼方」の文章の一部を改変した一文と、短い抜粋文を掲載する。 具体的には、「アンドリイ」「フェーディル」といった人名と、「彼」「彼女」といった人称代名詞を、すべて「人間…

【メモ】「媒体練習」他

「媒体練習」 レイモン・クノーの「文体練習」のように、同一の出来事について書いた文章を、さまざまな媒体を用いて制作する。 〈例〉 PC(キーボード入力)、スマホ(フリック入力)、声(音声入力)、原稿用紙(直筆)、口述筆記(代筆)、筆(書道)、石…

【現代音楽】呼吸合唱曲(文章による楽譜)

上演の必要条件 ・多様な音域の歌い手数十名をそろえなさい。 ・演者は舞台上で音声を発してはならない。 ・小規模なコンサートホールの狭い舞台に、大勢の者たちを密集して並ばせなさい。出演者の口を覆う物も、お互いのあいだに置かれる仕切りも、客席との…

【現代アート時評】千葉正也個展(東京オペラシティアートギャラリー) 他

千葉正也個展(初台/東京オペラシティアートギャラリー) オススメ度 ★★★★★ 会場に入ってまず目に入るのは、木製のダクト的な構造物に土が敷き詰められているインスタレーションと、緑の葉が茂ったいくつかの植木鉢である。一見豊かな自然があるように感じ…

作品「アンチ」 #架空の現代アート

♢ 労働者階級の男達が大勢でデュシャンの「泉」をとり囲み、全員で小便をかける。 タイトル「オーダーメイド」 ♢ 各家庭の便所に、学校の机・イス・ランドセルなどを設置する。 タイトル「クソ」 ♢ 逆に、「バンクシ―」と書いたネズミをオークション会場にば…

性別越境美術館 「男性器のある裸婦像」展 #架空の現代アート

※18歳以上の閲覧を推奨します 君ははじめ 女性として創り出されたものだが制作の途中で 「自然」は君にほれこんでしまいお添えものをつけて 君を私から奪いとってしまった私には何のようにも立たぬ 一つの物を付け加えて—— (シェイクスピア『ソネット集』中…

「責任の 責任による 責任のための責任」上演台本

責任の責任による責任のための責任 〔舞台 カメラやレコーダーなどが用意された記者会見場。規律正しい記者たちが演台をとり囲む中、政治家の高齢男性(女性や若者は不可)が登壇する。演台の両脇に置かれたプロンプターに以下の文面が映し出され、政治家が…

現代アート展「教育(仮)」構想 #読む人に想像してもらうインスタレーション

現代アート展「教育(仮)」構想 〈場所〉 廃校、もしくは現在使用中の学校校舎で、VRを用いて実施する。学校全体を展示会場にし、鑑賞者は校内を自由に見てまわる。 〈鑑賞者の服装〉 中学校の制服を配布し、鑑賞者に着用させる。不快感がある程度に小さな…

「私」 #読む人に想像してもらうインスタレーション

今回は、ツイッター(https://twitter.com/ShinyaKikui)で気まぐれに出している「#読む人に想像してもらうインスタレーション」をまとめます。一部未公開。 「インスタレーション」とは現代アートに用いられる用語で、空間全体の修飾や、鑑賞者参加側のパフ…

【諷刺録】特筆すべき現代アーティスト5組 バンクシー/アイ・ウェイウェイ/カテラン/ムニーズ/Chim↑Pom

気まぐれ更新の「諷刺作家備忘録」で、今回は現役の現代アーティスト5組を取り上げる。“騒ぎになること”を商売としているかのようなお騒がせな面子(めんつ)がそろった。あるラッパーに、『オレは人を不快にさせるのが仕事なんだ』という発言があったが、…

あいちトリエンナーレ2019 展示されていない作品を鑑賞していない記録・写真30点

先日、「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」を鑑賞した。名古屋に一泊し、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、豊田氏美術館と、四間道・円頓寺といった主要な会場を周遊。トリエンナーレにふさわしい現代アートの祭典であり、先端的な刺激に満ちていた…

絵を描く作家たち 酉島伝法、ブッツァーティ、ムロージェク他

先日、酉島伝法の『宿借りの星』(東京創元社 2019年)を読んだ。異形の者が「本日はお皮殻(ひがら)もよく」というような、造語をはじめとした創造力と遊びに満ちており、SF的世界に耽溺できる小説だった。 しかし個人的に注目したのは、著者自身が写実的…

【写真】「私の虹」

「東京レインボープライド2018」にて自分で撮影した画像と、検索から借用した画像の加工からなる写真集です。(「レインボープライド」を批判する意図はなく、5月6日の個人的な憂慮を表したものです。) ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦