自身で撮影した写真十点に、スウェーデンの詩人ラーゲルクヴィスト(1891ー1974)の作品二編を付けて公開します。ラーゲルクヴィストは岩波文庫に『バラバ』『巫女』がありますが、私は散文より詩に感銘を受けました。弱く孤独な者=自身への憐憫ある内省的な言語表現があり、1951年にはノーベル文学賞を受賞しています。
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ぼくのものでない小さな手よ
いったいお前はだれのものか?
ぼくはお前を闇の中で見つけた、お前はぼくのものではない
しかしぼくは、一人の人間が嘆くのをきく
お前の眼はどこにある、お前の胸はどこに?
闇の中ですすり泣くのはだれだ?
小さい手よ、泣くな!ぼくはお前をあたたかく抱きしめる
お前は闇の中でも決して孤独ではないのだ
小さい手よ、もう一度夜があけるなら
ぼくはお前の眼を見出すだろう
泣いている小さい手よ、お前はやはりぼくのもの
もし決して朝がこないとしても。
この世を通ってゆく私の道がどんなだろうと
私は一生を子供として止まるのだ
私の上にひろがる空間はあまりに大きく
私の五官はまったく打ち砕かれる
強者は天の空間に向って叫ぶかも知れない
誇り高き者は彼の頭を高くもたげるでもあろう
だが私の上を星たちが静かに歩むとき
私の思いは小さくなり、私の口は黙す。
引用文献『現代詩集Ⅳ イタリア スペイン 北欧 ギリシア』新潮社 1969年(二編共無題。全文を引用。)