愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

【写真詩】石川啄木歌集付

 

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   人がみな
   同じ方角に向いて行く。
   それを横より見てゐる心。

   家を出て五町ばかりは、
   用のある人のごとくに
   歩いてみたけれど——

 

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   死ね死ねと己を怒り
   もだしたる
   心の底の暗きむなしさ

 

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   どんよりと
   くもれる空を見てゐしに
   人を殺したくなりにけるかな

 

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   己が名をほのかに呼びて
   涙せし
   十四の春にかへる術なし

 

   高きより飛びおりるごとき心もて
   この一生を
   終るすべなきか

 

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 自身で撮影した写真に、今回は石川啄木の短歌を備えた。冒頭の前衛的な二首は歌集「悲しき玩具」、それ以降の四首は「一握の砂」から拝借している。
 短歌については、以前『ひきポス』で〈生きづら短歌〉特集をしたことがある。

〔→ ひきこもり目線で選ぶ〈生きづら短歌〉の最前線Ⅰ 平成の牛丼編 - ひきポス -ひきこもりとは何か。当事者達の声を発信-

 しかし、石川啄木ほど苦難を歌った歌人はいないだろう。わずか二十八年の生涯の内に生み出された、苛烈な悲壮が宿っている。

 

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