引き潮
昨日はひどい津波だったと
明日の人間が語っている。
私はまだ名前を発見できない
今日の引き潮を生きている。
人々は火山灰のようなものを恐れ
通り魔のようなものに身構えていた。
街は震災のように荒廃し
いずれでもないものによって被災地だった。
皆が自分のせいではないと言い
大きな寺院にも人がいない。
見えない海のようにやってきたために
誰もが各々の陸地にしがみついていた。
言葉まで失くしてしまわないように
ひそめるのは呼吸だけでいい。
私に世界が変えられないとしても
世界に私が変えられてしまわないように。
そして私は明日語るだろう
この深甚な引き潮のことを。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う文化的な防衛活動の実施3 KIKUI Yashin/画像 Pixbay