愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

現代アート展「教育(仮)」構想 #読む人に想像してもらうインスタレーション

 

  現代アート展「教育(仮)」構想

 

〈場所〉

 廃校、もしくは現在使用中の学校校舎で、VRを用いて実施する。学校全体を展示会場にし、鑑賞者は校内を自由に見てまわる。

 

〈鑑賞者の服装〉

 中学校の制服を配布し、鑑賞者に着用させる。不快感がある程度に小さなサイズを着用させる。

 

〈展示風景〉

 

1—A教室

 鶏29羽が監禁して飼育されている。校庭側と廊下側の窓から眺めて鑑賞できる。かなり騒々しくなるが、それでよい。

 

1—B教室

 羊29匹が監禁して飼育されている。校庭側と廊下側の窓から眺めて鑑賞できる。かなり窮屈な飼育環境となるが、それでよい。

 

2—A教室

 各机と椅子29組がゲージになっており、それぞれにネズミが一匹ずつ閉じ込められている。すべてのネズミに大量の餌を与えること。

 

2-B教室

 教室全部を水槽にし、廊下側から水族館のように鑑賞する。魚29匹がいるが、餌は与えず、共食いとなる。

 

3-A教室

 椅子の位置に29の樹を植え、長期間放置する。部屋全体が植物に侵食されていく。

 

3-B教室

 机や椅子(旧式のもの)を29組並べるが、椅子の座面を土にする。そのうちの28の座面で植物を栽培する。同一種だが、生育の速度などはすべて異なる。一定まで成長したら、すべてを同一の長さに切りそろえる。

 

空き教室

 教室の真ん中で、生身の子どもが一人で勉強している。制服姿で、そばを通る鑑賞者には反応しない。

 

カウンセリングルーム

 何もない部屋の真ん中に、首吊り用のロープ一本のみがぶら下がっている。

 

保健室 

 部屋の部分を建築的に削り取り、ドアを開けたらすぐ外に出られるようになっている。

 

トイレ

 鑑賞者が使用することもできるが、男子便所の大を使った場合、外から囃し立てられ、長時間使うと上から水をかけられる。

 

門扉

 本来は開閉式の門が移動可能な20センチほどの隙間を、地下十メートル以上の深さまで掘っておく。学校と外の地域との間に小さな谷底ができるかたちとなる。スマホなどを落とした場合でも回収不能

 

校庭周辺の植え込み

 樹木が並んでいるが、すべて幹が立ったまま中間部分で切断されている。その隙間に水平にガラス面がはめ込まれており、遠くから見るとふつうの樹木のようだが、近づいてみるとすべて中間部分の幹が接続していないことがわかる。

 

 

 〈 関連イベント〉

 

・「みんなで一緒に『個性』を書こう!」 

・参加者に習字をさせ、「個性」という字を書いてもらう。それ以外の文字は不可。書きあげたあとで、下手な文字を教師役の人間が赤字で厳しく添削する。正しく書けるまで居残り・書き直しをさせ、参加者全員がほぼ同一の「個性」を書けるようになるまで、イベントの終了を許さない。

 

・「みんなで『人』を組み立てよう!」

「人」という文字のパーツを2メートル前後の立体で複数作成し、訪れた人に協力して組み立ててもらう。アンバランスな「人」や刃物付きで危険な「人」などがあり、最後には巨大な「人」(圧死する危険がある重さ)を大勢で支え、おのおのが笑顔で写真に映る。

 

 

 

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