愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

【現代詩】時ははやくすぎる 光る星は消える ぼくにもういちど顔を投げろ

 詩集『ぼくはまなざしで自分を研いだ』(2020年)より
  時ははやくすぎる 光る星は消える ぼくにもういちど顔を投げろ

何のために生まれて
何のために生きるのか。
大人になって自分を食べて
涙のぼくは救われる。
首をはねられても熱いこころ
みんなの夢を守るため。
やさしさで頭部をなくしたまま
生きていくんだ どこまでも。

広い夜空にながれ星
冬の成層に呼吸がとまる。
友のまなざしは心臓で砕け
鉄の大地に破片が刺さった。
他人にとっては気分でも
ぼくにとっては一生だった。
ただ一度きりの跳躍に賭し
そしてぼくはその賭けに負けた。

そうだ 恐れないで 生きるよろこび
愛と勇気だけが友達さ。
たとえ胸の傷が痛んでも
飛んでいくんだ どこまでも。
星に願いが叶うなら
ぼくにもういちど顔を投げろ。
人からほほえまれたときのために
年老いたの顔をもうひとつだけ。

ああ そうだ
やさしい君はいつだって
まなざしを食べる怪獣を
あの弾劾でやっつけてきた。
未来は口を開けて待ち
人類の食欲は終わらない。
やっつけてくれ
あのパンチで
大いなる夜に
あのパンチで

 

 

 

※参照 やなせたかし作『アンパンマンのマーチ

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