愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

【現代詩】心の壊し方を教えてください

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心の壊し方を教えてください
未だ私には悲しめるほどの心が残っています
痛みを避けたいと思ってしまうほどの理性も
明日が来ることにおびえてしまう恐怖も
私には未だ残ってしまっています

涙の枯らし方を教えてください
肉体の源は尽きているというのに
未だ心臓は熱い涙をほとぼらせています
人間を押し流していく暴力を止める
この命に干ばつをもたらすとどめがなぜさされないのですか

希望の棄て方を教えてください
この目には未だに空の光がうつり見えてしまいます
果てしなく痛打されてもなお湧き上がってしまう怒りが
未だ故郷を捨てられないほどの弱さが
この汚物にはとめどなく脈打っています

神への不敬も魂の堕ろし方も
この身はまだ半分しか知りません
自分がまだ自分を知っていないと知っているために
魂からの離別が引きとめられてしまいます
それでもなお 
それでもなおと
新しい一日へ至ろうとする愚行が
この身がまだ終わっていないという事実が
生命を変える驚きに焦がれさせ
この人身は燃え尽きたことを幾度となく忘れ去ります

明日の不測な出逢いへの期待が 
過去への猛烈な郷愁が
未だ私を引き止める今日
ここにあるものを苦しませる心の壊し方を教えてください