愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

「私」 #読む人に想像してもらうインスタレーション

 今回は、ツイッターhttps://twitter.com/ShinyaKikui)で気まぐれに出している「#読む人に想像してもらうインスタレーション」をまとめます。一部未公開。
 「インスタレーション」とは現代アートに用いられる用語で、空間全体の修飾や、鑑賞者参加側のパフォーマンスなど、固定された絵画やオブジェにとどまらない作品を総称した言葉です。
 以下の断片では、自分で制作するのが極めて面倒くさいものや、実現不可能なものも書き留めています。

 

 

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「人」という文字のパーツを2メートル前後の立体で複数作成し、訪れた人に協力して組み立ててもらう。アンバランスな「人」や刃物付きで危険な「人」などがあり、最後には巨大な「人」(圧死する危険がある重さ)を大勢で支え、おのおのが笑顔で写真に映ってよい。

 

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「YES」と書かれた小さなメモを無人の荒野に埋め、そのことを一生涯誰にも話さない。 

 

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親子やカップルなど大勢の参加者を集め、広い場所で木製の看板にそれぞれ「正義」の字を好きなように書いてもらう。そしてその看板で、一定期間自由に(全力で)叩きあってよいこととする。

 

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「自己責任」と書かれた看板で、歩行者をランダムに殴る。

 

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表現の自由」と書いた防弾チョッキを着た人を、「表現の自由」と書いた銃弾で撃つ。

 

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グーグルマップなどで自宅を「美術館」に設定し、訪ねてきた人に「私自身が作品だ」と主張した上で、一緒にお茶を飲むまで帰宅させない。

 

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「ここは美術館です」と書いた民家に、「これはアートです」と書いたキャンバスを置く。

 

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世界各国の歴史的な記録文書の裏面(白紙)を並べて展示する。

 

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歴史的な記録文書の裏面(白紙)をスキャンし、大規模な「裏国立国会図書館」のデジタルアーカイブを作成する。

 

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自民党公文書管理改革の成果」という嘘の会見を開き、新品の大型シュレッダーについて真剣にプレゼンする。

 

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「記憶にございません」と口にする国会議員の頭部に、シュレッダーの用紙差し込み口を同化させた特殊メイクをほどこす。

 

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自民党ビル内の自動販売機コーナーに、「ドリンク」「フード」とならべて「公文書」「議事録」「議員バッジ」の自動販売機を設置する。

 

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安倍首相の会見会場に入り込み、(安倍首相を無視して)大勢でプロンプターだけを囲み取材する。

 

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永田町近辺に、両耳に布マスクを着用した、権力者の巨大な厚顔のオブジェを設置する。

 

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自民党議員が演説しているところに行き、集団で両目に布マスクをつけて演説を聞く。

 

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長方形のビルを巨大なUSBに模す。

 

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数十メートル規模のコンセントとプラグのオブジェを作成し、国境を挟んでそれぞれを別の国土に設置する。 

 

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美術館の展示用の台の上で、私服の男性二人が手をつないで長時間立つ。

 

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DVDレンタルショップの「ラブストーリー」の棚を、ゲリラ的にすべて異性愛以外の作品にする。

 

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膨大な量の「私」の文字を、電光掲示板でリズムを変えながら点滅させる。
 

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さまざまなマイノリティをもつ数千人の人に書いてもらった直筆の「私」の文字が無数に並ぶ数十メートルの壁を建造。

 

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一日に一つだけ「私」という文字を書き続け、数十年分の「私」の字で埋めつくされた巨大なキャンバスの制作。

 

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長期間にわたって「私」の文字のバリエーションのみをツイートするツイッターアカウントを運営する。

 

  (以下 その例)

 

私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私
私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私
私私私私私私私私私私私私私私私私私 私私私私私
私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私
私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私
私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私

 

 

 

ワタ

 


              私 私 私
      私
    私       
 シ

            私

 

 

 

わたし わたし わたし わたし わたし

 

わたし わたし わたし わたし わたし

 

わたし わたし わたし わたし わたし

 

わたし ワタシ わたし わたし わたし

 

わたし わたし わたし わたし わたし

 

 

 

 

 

 

 

     私