秋の夜に
僕は僕が破裂する夢を見て目が醒めた
(「脱毛の秋」)
あ〃 おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云う
(「帰郷」)
血を吐くやうなせつなさかなしさ。
(「夏」)
わが生は、下手な庭木師らに
あまりに夙(はや)く、手を入れられた悲しさよ!
(「つみびとの歌」)
私は希望を唇に噛みつぶして
私はギロギロする目で諦めてゐた……
(「少年時」)
飛んで来るあの飛行機には
昨日私が昆蟲の涙を塗つてをいた。
(「逝く夏の歌」)
港の市の秋の日は
大人しい発狂
私はその日人生に
椅子を失くした
(「港市の秋」)
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自身で撮影した写真に、吉田煕生編『中原中也全詩歌集 上』(講談社文芸文庫 1991年 ※一部を新字体に修正して表記)より抜粋した詩文を付けて掲載いたしました。以下の記事でも中原中也の同様の詩を取り上げています。