愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

【アート】ダークユーモアの描き手4人

漫画家や風刺画家とも一線を画す、独自のユーモアやシニカルな視線を持った描き手たちがいる。今回はその中から、特筆すべき4人のアーティストをまとめてみた。

 

デヴィッド・シュリグリー DAVID SHRIGLEY

イギリスの現代アーティスト。日本でも2017年から2018年にかけて、水戸芸術館で個展が開かれた。明確な黒の線からなるヘタウマな絵が大量にあり、イギリスらしいというのか、冷めた知性的な視線がニンゲンという生き物の滑稽さを強調している。一言コメントをともなう作品が多くあり、1コマ漫画的な完結を見せる。 

 

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チャールズ・アダムス Charles Addams

 20世紀半ばのアメリカで活躍したカートゥーンの描き手。映画化された「アダムス・ファミリー」の原作者で、日本なら「絆」とか平和的なものとして描かれやすい“家族”の姿を、死や虚栄的な目で見て毒気あるものとして描いている。(それは家族像をダークに描いたというよりも、ただ単に虚飾しなかっただけかもしれない。)

 

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(「この先工事中」の看板。)

 

ホアン・コルネラ Joan Cornellà

スペイン出身の現役のアーティスト。ネットで拡散されたことでその筋(ダークユーモアファン)に知られるようになった。道徳観を吹き飛ばす強烈な6コマの作風で、デザイン的に記号的な人物描写と明快な彩色が特徴的。表現として奇態であり、個性が強い。グロテスクで性的な漫画が、子供向けの番組みたいに平然と、しかもサイレントに進行する。現代社会の暴力性を、アニメチックな表現による暴力性で相殺させる荒業をしている。

 

参考 2017年に日本で個展が開かれた際のコルネラのインタビュー記事
https://www.cinra.net/column/201712-joancornella

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トミー・ウンゲラー Tomi Ungerer

フランス出身の画家。「すてきな三人ぐみ」という絵本などで、“児童文学のノーベル文学賞”と言えるアンデルセン賞を受賞。しかし子供には見せられない別の顔があり、ディープで辛らつな性的・アングラ的作風がある。20世紀のアメリカで最先端の文明にふれ、モノ化された「犯される人間」や「支配される人間」像を描いた。

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ツイッター(@ShinyaKikui )の風刺作家備忘録で、この他のアーティストをとりあげています。よければご覧ください。

※この記事の画像はGoogle検索の結果などから失敬しています。