愛さないことにかけては世界の方が上手

詩人・ライターの喜久井伸哉(きくい しんや)による愚文集

小説

【小説/MAD】飼育 feat.女子高生(大江健三郎の小説『飼育』に登場する「黒人兵」を会田誠の絵画『犬』をモデルとした「女子高生」に改変した日本文学)

※本稿は、大江健三郎の小説『飼育』に登場する「黒人兵」を、会田誠の絵画『犬』をモデルとした女子高生に置き換えた文章です。公序良俗に対して、適切であるために作られた文章ではありません。 参照大江健三郎 『大江健三郎自選短篇集』 岩波書店 2014年会…

【小説】小鯨猟

祖筋少年たち三人が、マンションの一室でそれぞれの漁の成果である「小鯨(しょうくじら)」を見せ合う。李(リー)や圭(ケイ)は見事な「小鯨」を見せたのに対し、「僕」の取り出した「小鯨」はあきらかに異質で、他の二人を狼狽させる。 小鯨猟 あんたは…

【散文】特に救いはないショートショート集

今回は、現代詩ではなく散文(ショートショート)です。詩を書いたときに出てきた削りカスであり、粗雑なものですが、まとめると掌編風になります。お時間ある方はどうぞ。 ※※※※※※※※※※※※※ 西の大泥棒と東の大泥棒 あるところに、西の大泥棒と、東の大泥棒が…

絵を描く作家たち 酉島伝法、ブッツァーティ、ムロージェク他

先日、酉島伝法の『宿借りの星』(東京創元社 2019年)を読んだ。異形の者が「本日はお皮殻(ひがら)もよく」というような、造語をはじめとした創造力と遊びに満ちており、SF的世界に耽溺できる小説だった。 しかし個人的に注目したのは、著者自身が写実的…

【本】芥川賞が選ばなかった最先端の日本文学3選

村上春樹、高橋源一郎、島田雅彦、中原昌也。これらの作家たちに共通することがある。それは、優れた前衛小説を書きながら、芥川賞を取らなかったことだ。芥川賞は、半年に一度やっているわりに、これぞという作家たちを漏らしてきた。(新人の傑作が候補に…